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伊藤製作所「豆畑支所」
   
 

メリーランドの植物

2014年04月18日(金)

つれあいが旧友に会いたいというので、Cに運転してもらって、あたしはいやいやついていった。チェサピークベイの向こう側(そこもメリーランド州)に行ったのだが、道々すごいものを見たのである。白い花の咲く、バラ科落葉高木で、満開であった。いい感じの上に伸びる木で大きすぎず小さすぎず、道路脇などにいかにも植えられたように生えていたが、そのうち、道路脇から逃げ出して林をつくり、いちめんの林になり、野生だったのかなと思うとまた道路脇などに植えられたみたいに生えていて、色もいろいろ、あるものは葉のない木にまっ白に花だけ咲いてるが、あるものは白い花に淡緑の葉がまじりこんでいて、あるものは淡緑の木の中に白い花が咲いているというぐあいで、つまり白から緑までグラデーションになってるのである。木は細長く、紡錘形をしており、幹は枝分かれをする。あれはなんだろうと話しながら向こうについて、土地の古老に聞いたところ、ホーソーン(サンザシ)だ、旺盛にいくらでも殖えるという。ホーソーンか、とうとう見たなどと思いつつも、なんか違う、サンザシというのはたしか藪状の灌木だったはず。で、帰ってきて、いつもの伝で調べ上げてるうちにたどりついたのが、Pyrus Calleryana 和名でマメナシないしはイヌナシという東アジア原産の植物。東海地方には自生地がいくつもあるそうだ。アジアナシの原種だそうだ。花は清楚で紅葉も美しく、観賞用の植物として手びろく植えられて(他にも使い道はあるようだ)まんまと逃げ出し、うち広がり、野山をおおい、今じゃこの辺で、invasiveな植物として扱われているそうだ。いやまったく、その広がり方は尋常じゃなかった。
それからinvasive plantとしてのクズをとうとう見た。みたいみたいと思っていたのだ。アメリカで生きてるクズ。カリフォルニアにはないのである。クズは枯れ果てて無残な骸をさらしていたが、骸でさえ、いろんなものの上にからみついて生前のエネルギーをあたしたちに見せつけるのだ。どんなに死んでも、クズならいくらでも蘇ってくる。毛の生えた先端をするすると伸ばしていろんなところにもぐりこんでくる。これについては『木霊草霊』にじっくり書いたので、そっちをぜひ読んでください(岩波書店近刊)。
それから湿地帯を通り過ぎたとき、見たのがなんとスカンクキャベツの大群、もう花は終わって、緑の葉を思い切り生やしていた。これは日本語ではザゼンソウ、サトイモ科だが、雪を突き抜けて花(ミズバショウをどす黒くしたような花)を咲かすとき、熱を発して雪を溶かすんだそうだ。そしてエルマーの友だちのりゅうの大好物なんだそうだ。

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