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伊藤製作所「豆畑支所」
   
 

ケンカと客

2014年09月13日(土)

きょうから長逗留の客がいる。ドイツ人のコンピュータ関係者で、去年の今頃もやってきて長逗留した。知的でおもしろい人なのだが、ベジタリアンのところは少々めんどくさい。しかしつれあいはそっちにかかりきりになるので、つれあい的なめんどくささはだいぶ減ってありがたい方が大きい。ゆうべ熾烈なケンカをした。あたしは普段ひきずらない。まったくひきずらない。3分後にも怒りをおさめ、自分にも非はあったと反省し、普通の顔に戻って会話をつづける。いや、正確に言えば、つづけられるのだが、彼はひきずる。えんえんとひきずりまくる。それで昔は1週間も、今だって(年取って多少おだやかになった)1日2日はろくに口もきけなくなる。そこが、すごーーくいやだ。ひきずるということは怒りを保持するということだ、そこには自分は正しい、相手が悪い、という心ひとつしかないような気がする。ないしは自分がそうやって怒りをひきずって見せることで、相手を動かそうという劇場型か。いずれにしても、どうやればそういう行動がとれるのかが、そもそもあたしにはわからない。若かった頃(といってもたった20年くらい前)はこの性格が不思議でかつ不愉快でたまらなかった…。と昔話はこのくらいにして、しかし今回、その、ひきずらないはずのあたしがひきずって、今日の夕食になるまで口をきくのも向かい合うのもいやだった。しかし客が来たおかげで、そうもいっていられなくなった。今日はロブスターマッシュルームというものを買い求めたので(秋だ…)リングイネでクリームソースのパスタだった。ベジタリアン。

夜半

2014年09月11日(木)

今、どこかで、スカンクが一匹死んだ。

日没

2014年09月11日(木)

スーパー月の日に、残念ながら月は見逃したが、日没の頃ニコを連れて散歩に出て、ぼんやり歩いていたら、空は青黒というか、青空から光が消えたような色になっていて、西のほうがなんとなくまだ明るかった。晴天だったから、雲ひとつない青黒い空であった。ところがふと、東を見ると、地平線の近くにある(といっても家々で遮られていたが)積乱雲めいた雲が、朱色がかったピンクに染まっていたのである。まるで雲だけを着色したようであった。あわてて西の空を見ると、日は沈んで、日没直前の明るさや騒々しさがすっかり静まった空である。いったい光がどこをどうやって屈折して東の空の低いところにある雲にとどくのか、それからずっと考えている。今日は、もっと見晴らしのいい公園の駐車場(ノミ禍対策で、この頃はアスファルトのところばかり歩いている)に行ったら運良く日没が見られた。沈む日が、ほんの少しばかり残って、水平線にひっかかって、少しぷるぷるしてすっと消えて無くなった。まるで人の死ぬときのような沈み方だった。人の死というものが毎日の日没のようなのかもしれないなあとも考えた。

Uの「ごはん」

2014年09月10日(水)

土曜日の午後と日曜日は学会さぼって(というか、あたしはただの付き添いで、もともと出る義理もなんにもないので)あたしはUと遊びにいってたのだ。Uは2歳2ヶ月で、少ししゃべれるようになっている。こないだ会ったときはまだ「ばーば」が言えなかった。今は言える。いきなり入っていって驚かしたので、「ばーば」と言いながら(つまりあたしをあたしと認識したのだが)泣いた。でもしだいに慣れてきて、出かけるときは「ばーば、しゅー」といって靴を持ってきてくれたし、いろんなおもちゃたちの話もしてくれた。してくれるが、だいたいは親に通訳してもらわないとわからないのである。「ばいきんまん」ははっきり言えて、あんぱんまんの本を何回も持ってきた。それはトメのお古の本だ。「ことばあそびうた」の詩を読んでやると爆笑する、と母親カノコはいってたが、あたしにはくりかえし「ばいきんまん」といいながらあんぱんまんの本を持ってきた。「むーん」が好きで、描いてもらいたがるが、描くとすぐ「くらうど」といって上をぬりつぶす(磁石で絵がかけて消せるおもちゃ使用中)。「さん」というから太陽を描くと、また「くらうど」といってぬりつぶす。レストランに行ったときには子供用いすにすわるや、ウエイトレスのほうを見て、はっきりした日本語で、たぶん本人は日本語とも気づかずに、「ごはん? ごはん?」といっていた(イタリアンの店だった)。そういえばトメが4、5歳の頃、スシ屋につれていったら(カリフォルニアで)ふだんは英語スピーカーなのに、いきなり「すいませーん、たまごくださーい」と注文していたことを思いだした。帰ると、雲ひとつない夜空にいい月が出ていて、Uは地面にすわって月見をはじめ、「まましっだうん」みたいなことをいって母親をすわらせ、「ばーばしっだうん」とあたしをすわらせた。

バクスバウム氏

2014年09月09日(火)

バークリーは学際的な学会で、心理学者や考古学者や民俗学者や科学者が入り混じり、発表はぜんぜんついていけなかったが、ディナーやパーティーはとてもおもしろかった。つれあいの妻と自己紹介しなければいけないのがいまいちおもしろくなかったのだが、おもしろい人たちがいっぱいいたから、まあヨシとしよう。いちばんおもしろかったのはバクスバウムさんだ。自己紹介しあってから、「あなたの名前、ドクタースースの『きみの行く道』の最後に出てきますよね」と言ったら、「なんで知ってるんですか?」(まあちょー有名な本なのだが)ときかれ、「だってそれ日本語に訳しましたから」と言ったらむこうもおもしろがって、いろんな話をしてくれた。ドクター・スースとは友人で、バクスバウムの名前をきいて、「バクスバウム、ビクスビー、ブレイ」と言葉遊びをしたそうだ。そこからあの有名な本の最後の部分ができたそうだ。しかもバクスバウム氏は、若い頃コーネル大学でナボコフの授業を取ったし、いっしょに旅をしたこともあるそうだ。それはロシア文学という授業だった。ナボコフは、なまりはあるが、かんぺきな英語を話し、なまりもそんなにろしあーというほどではなかったそうだ。そしてロシア文学では、ゴーゴリとプーシキンが好きでドストエフスキーはきらいで、トルストイはセンチメンタルすぎると評していたそうだ。次の年は世界文学で、おそらくフランス文学を取り上げたはずだが、彼は残念ながらその授業は取らなかったそうだ。バクスバウム氏は81歳の美丈夫で、ちょーかっこよかった。ああこの頃81歳なんて若いじゃんと思ってしまうあたしの感覚は何??
『きみの行く道』(ドクター・スース作 いとうひろみ訳 河出書房新社)の最後のページのまさにバクスバウムさんのところ、あたしがいちばん訳に工夫を施したところだ。こんな工夫をしたんですよ、とバクスバウムさんに説明したけど、日本語を知らない相手に伝わったかどうか。

老々介護の現実とノミ禍

2014年09月09日(火)

つれあいの付き添いでバークリーに7時間半かけて走って行って、3泊して7時間半かけて帰ってきた。渋滞だと8時間かかるが渋滞は免れた。帰りは錦織チリッチ戦を見たい一心で朝6時に起きて走り抜けた。昔はこの500マイルの道のりはたいていだれかと運転を交代しながら走ったものだ、つれあいとか、娘たちとか。この頃つれあいと行き来することが多く、またときには一人で行き来することさえあって、つまり一人で走り抜ける。7時間半の半はガス補給したりなんか食べたりトイレいったりしてるから、まあ7時間だ。山あり谷あり、市街地ありだ。ぶっ通しに走るのだ。こういう態勢になってもう数年。最初は申し訳ながっておれもおれもというつれあいをだましだましあたしが走り通した。しかし、この頃はつれあいはもう何も言わない。言わないどころか、寝ておる。そしてなんとかいう薬のせいで、いきなりおしっこしたくなって切羽詰まる。それで今日も、二度ほど路肩に停めて、彼はおしっこした。(スコットランドでは同じことをやっていて、おまわりにスコットランド弁で厳しく叱られた)帰ってくるや、彼は書斎に入ってテニスを見ており、ありがとうの一言もない。おつかれさまということばは、そもそもない。あたしが犬を散歩に連れて行き、仕事の残りを片付け、ごはんを用意してるうちにもただすわっておる。むかしなら文句の二つ三つ言うところだが、この頃は実際、動くのが無理なので、何も言う気になれない。
北カリフォルニアはやっぱりここに比べると涼しかった。帰ってきたらひどく蒸し暑かった。その上、机にすわったとたんに首に違和感があり、つまんでみるとノミである。夕食後、台所を片付け、つれあいの洗濯物を洗い、やおらニコを洗うと、60匹以上のノミが取れた。ニコはすまなそうにしておる。おとなしくいじくられるままになっておる。出かける前に洗っていったばかりである。そのときは30匹取れた。ノミ取り器には、20匹以上かかっている。3日間、ノミに咬まれず、ずいぶん生のかきこわし傷が癒えた。でも毎晩かゆくてもんもんとした。かきむしる夢を見て、目を覚めるとかきむしっているのだ。そして今またどんぶりに溺死させたノミが60数匹。泣きたくなっておる。

2015年9月Keenlyside本祭り

2014年09月05日(金)

なんと、2015年9月にKeenlysideが、ROHごと、マクベスやりに東京に来るというのがわかったっっっ。飛んで火にいるなんとかだ、すでにあたしは厳戒態勢に入っておる。東京のオペラのチケットはちょー高いらしいが、しかしロンドンに行くよりは安いだろうし、コヴェントガーデンだって、目玉が飛び出るくらい高かったし。あたしの場合はまず日本に行かねばならないのであった。

テニス

2014年09月04日(木)

きょうは錦織ワウリンカ戦、つづいてジョコビッチマリー戦であった。あたしは画面のすみでちょこちょことスコアを見ていたのだか、ついにつれあいは仕事を放り出して2時ごろから見始め、コンピュータで見ているので、つまり仕事場のコンピュータの前にすわったきり、ごはんもここで食べると言い出して、適当に残りものなど(ゆうべお客がきたので残り物があった)ちゃっちゃと、フォークだけで食べられるものをつくって、仕事場で食べたのである。なんだかテニス見てるときだけケンカしないで済んでおる。あしたはフェデラーだが、客がくるのだった。あさっては錦織ジョコビッチだがバークリーに移動日で無理だと思う。つれあいはテニスで高揚していて機嫌がよく、もしかしたら錦織はジョコビッチに勝つかもしれないなどとお愛想すら言っておる。こんなに機嫌がいいならずーっと見せておきたい。つれあいとはテニスのことしか話したくない。テニス専門チャンネルというのに加入すれば見たい放題だが、マジで考えている。
昼食のとき、このままじゃやっていけなくなるので、ヘルパーさんみたいな人を雇わねばといってみたが、やはりそこは将来であって「今」とは捉えてないようだ。

Keenlyside祭り 再燃

2014年09月03日(水)

こないだロイヤルオペラハウスのきっぷをネットで買ったからメールがくる。おとといROHのメールを何の気無しに開けたら、Keenlyside のアップがどでかくどんとあって、McVicarのRigolettoのタイトルロールやるという。どきどきした。よくよく見ればかなり老けておる。若いときのDVDをみてるから若いイメージがあったが、けっこうな老け方だ。こないだYouTubeで見つけたAdesの曲のライブコンサートも、けっこうおじさんだった。パパゲーノのときの若さはどこへ行った? まあしかし老いなら慣れておる。なんでリゴレットなんて役やるのかなあと思ってたが(KeenlysideのHPにもちょくちょくいってるのでやることは知っていた)ああいう役もいいのかも、もしかしたらその演技上手のところがものすごくいいのかもしれないなあと思ったら、みたくてたまらない。YouTubeにもとうぜんだがまだ出てない。7パウンドから190パウンドで9月12日から10月6日までやってるという。あーロンドンいきたい。ちょーーいきたい。ここのところベルリンに行きたくてもんもんとしていたが、今はロンドンも行きたい。

だらだらと

2014年09月02日(火)

終わったと宣言しちゃうとだらけてしまうもので、ずるずると夜半まで、山椒大夫はかかってしまった。途中、つれあいが錦織の試合みていたので、ちらりちらりと見たりした。どう見てもラオニッチの方が消耗していた。サーブはうつが、錦織が打ち返した時にはもうぜんぜん体がついていってなかった。気の毒だった。体力的にも、精神的にも。で、山椒大夫終わったあとも、ついだらだらと『アスラーン戦記』…なんか名前が違う感じ? Kさんにすすめられて読みかけたのを読み通した。こないだ10冊で999円セールがあって買った『蒼天航路』読んだりもしていた。もちろん『鋼の錬金術師』もまだ読んでない巻がある。とわりとふつうに漫画に溺れていた。いってみれば摂食障害者がストレスから自分を解き放つためにビンジ食いをするようなものだ。『鋼の』はまだせっぱつまっていたとき、トメにすすめられておとな買いしたのだ。ここのところののみ禍で、ついに顔まで食われたので、のみ取り器というのを買って設置してみた。もう7匹かかっている。ニコのからだにまだ何匹もひそんでいるのは知っている。あたしなんてもう食われるとこがないくらいだ。

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