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大雨と母の帰還と善き人のためのソナタ

2008年05月28日(水)

母が「外出」ということで父のいる家に五時間帰ってきて、コーヒーのいれたてを飲み、トーストのやきたてを食べ、タバコを吸い、ビールを飲み、おすしを食べ、妹たちと電話で話し、孫たちと電話で話し、来たときよりしゃっきりして帰って行った。その間じゅう豪雨だった。朝、病院に車でいき、介護タクシーに同乗して父の家に行き、介護タクシーに同乗して帰るときに車の鍵を忘れてきたので、歩いて家に帰り、車の鍵をもってまた歩いて病院に帰った。ふと見ると母の下痢便が、あたしの腕にも髪にも服にもついていた。車の通る道とはちがう道をとおって行ったら、河原の草地の中に子ども用遊び場が出来ており、ちょっと失望した。そこは「河原荒草」を書いてるとき、さんざん通った草地だった。車をとって、帰りに入浴剤とムヒEXという強力かゆみ止めを買って帰った。入浴剤は、容器にごてごてと色の無いのを選ぶのに一苦労した。この頃色の氾濫に心底うんざりしていて、ものを買う基準が「色」なのである。こないだ湯沸かし器を買ったときもさんざん苦労して、ピンクや黄色じゃない黒のを手に入れた。オーブントースターも、花柄や縞柄じゃなく、でかでかと説明やイラストの(ピザは何分、トーストは何分などと)ついてないのを選ぶのが一苦労であった。ともかく中身の入浴剤は色がついてていいんだが、容器に色のなるべくないのを買った。きょうの電話でトメが見にいった「ナルニア」の話をしていたので、カスピアンとリーピチープ、レイトショーで見にいこうかと思っていたが、豪雨なのでやめた。借りてあった「よき人のためのソナタ」を見ることにした。虫にさされた足は、腐りかけ、かつ治りかけ、掻きすぎで膨れあがり、ひかひかになり、薬のぬりすぎで、こてこてになっている。お湯によーく浸けて、かさぶたを洗い落とし、虫の唾液の入った漿液も洗いながして、よくかわかし、そこに化膿止めをすりこんで、周囲にかゆみどめEXをぬると、良いようである。普段ならば飛び上がるほどの熱さのお湯に足をじゅっと浸けたら、ああああ、かゆさ変じて快感と成る。信じがたいほどの生理的な快感が襲いかかってきたのである。
‥‥そしたらこの映画がいいのなんのって。ナルニア見にいかなくてよかった。豪雨でよかった。主人公がだれかに似てると思ったら、T川S太郎さんとケビン・スペイシーを足して2で割ったような顔なのであった。

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