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伊藤製作所「豆畑支所」
   
 

グラスゴーのマッキントッシュ

2014年04月12日(土)

つれあい孝行の旅なので、彼の自尊心と老い衰えた肉体とそれに向かい合う不機嫌と依怙地さ(モラハラじゃね?と思うこともたびたびあったが、こうして老い果てたのを見ると、たんに性格が悪くて頑固で依怙地だったようだ)を我慢しようと思えども、やっぱりむかつく。
とにかくホテルはグラスゴーの町のど真ん中だった。駐車事情がとても悪い。隣はオペラハウスだ(行かれない)。今日はつれあいの趣味で、まずグラスゴー美術学校にチャールズ・マッキントッシュの建築を見に行き、終わった頃、グラスゴー在住の友人が迎えにきてくれて、ヒルハウスというマッキントッシュの設計した個人の家を郊外の方に見に行った。なにしろつれあいは植物や動物や自然よりも建築や町のありように興味があるシティボーイなのである。あたしも実はシティガールなのに(だからこそか)植物や動物がおもしろくてたまらない、なんでこんなに違うか、喧嘩ばかりなのもむべなるかな。町は、歩けない老人にとっては実にむずかしい。というか不可能だ。だからせめて蒸留所めぐりならできるかと思ってアイラに行ったが、蒸留所はLagavulin一カ所で精一杯、それ以上は歩けなかった。その上なんとこの頃つれあいはスコッチを飲みたがらなくなっている、薬のせいで体質がかわったと本人は言っている。あたしは年のせいだと思う。景色を見ていても、つれあいは、動植物には目もくれず、島のいたるところにある石塀を見て、作り方を解説し、白い壁の家々を見て、建て方を解説し、荒れ野を見ても花なんか見ずに、ピートが切り出された跡なんかを見ている。
マッキントッシュの建築は、アールデコの装飾にオリエンタル趣味、図書館の障子みたいな壁と欄間みたいな装飾は、まるで日本の意匠をとってつけたようで、ルシウス・モデストゥスのお風呂もこんな感じかと思った。きょうはシャクナゲが咲いているのをあちこちで見た。これは2年前オレゴンにいったとき目についてそのときさんざん調べたのだ。北米原産のもあるとわかったような気がする。ブリテン諸島原産のもあったのか、それとも園芸植物か。ここ在住の友人は夫婦で、妻がグラスゴー大学で中世文学の研究者で、前に『マリー・ド・フランスのレー』というのをすすめられて読んだことがある。それは岩波文庫に入っている。会って話したかったのに今は学会でどこかにいる。残念である。
夜はレストランでハギスを前菜。鹿肉のハギスであった。いいレストランで(ホロホロチョウをはじめてたべたが、実においしかった)伝統的なハギスより上品につくりあげてあり、不味くはなかったが、明日も食べるかと聞かれれば、いや食べないと答えるものだ。

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