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伊藤製作所「豆畑支所」
   
 

オスロまた

2012年10月15日(月)

おとといのスピーチ、穴が入ったら入って出てこられないような出来であった。でも朗読はちゃんとできた。きのうの朗読もちゃんとできた。日本語でも伝わってる感を感じて、全力投入でできたのも、R子さんやMネくんといった日本語のわかる人々の存在もあるが、スピーチのリベンジで必死だったせいもある。
きのうの朝はまた国立ギャラリーにいった。またムンクを見た。こんなにおもしろいとは思わなかった。「病室の死」の女がまうしろに(つまりその部屋のなかの位置)立っている「インゲ 黒と紫の」のインゲだというのに気がついた。「娘と母」にも「橋の上の女の子たち」にも月がポッカリ出ていた。人々の服の緑がすばらしい。キャベツの緑もすばらしい。空の色の赤もすごくすてき。
「木霊草霊」にかきたくて丹念に植物をみておるが、さかりの、いきいきとした、目をひくものはなんにもない。これが忘れかけていた「初冬」というものだった。どんなに色づいている葉も、そういう意味の目のひきかたはしないのだ。みんな静かに、静かに、沈んでいこうとしている。木のなまえがわからないのがもどかしい。広葉の、これからどんどん落葉していく葉の、大きい木が、地面にとどくほど枝を伸ばしている。その枝をにぎってみたら、これから沈んで黙って息を潜めて数ヶ月を生きるのだという覚悟が伝わってきた。

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