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伊藤製作所「豆畑支所」
   
 

アカバナ科とロゼットと河原夏草

2012年08月28日(火)

まだ書けなくてもんもんとしておる。しらべれば調べるほど、わけがわかんなくなっていって、マツヨイグサとアレチマツヨイとオオマツヨイとコマツヨイとメマツヨイとマゴマツヨイとがごっちゃになり、アカバナ科のほかの草たちも、ラテン語名と英語名と日本語名の間で、どんどんわけがわからなくなっていく。今日トメを迎えに行ったら、学校の前に一株あった。おりとって持って帰り(茎がすじっぽくて折り取るのがたいへんだった)びんにさしたら、夜になって二つ花が開いた。たぶん湿地マツヨイだ。「サンディエゴ郡の自生植物」という本にのっていたのにそっくり……といっても、鵜呑みしているだけで、あたし自身はマツヨイだなということしかわからない。「エンピツ草」と名づけていたやつが、「アカバナ」というアカバナ科のタイトルロールみたいな存在であったのを知ったのはずいぶん前だ。鉢植えしてあるあれやこれやの鉢に、どこかからやってきてひっそりと咲いている。とてもかわいらしい。これは自生種のようだ。なんでこんなに書けない書けないと思いながらマツヨイグサについて書きたいのかというと、なんだろう、きっと隣の荒れ地にやたらにアカバナ科のマツヨイっぽいものが多いからだ。熊本の河原へんを歩いているとたいていキク科とイネ科とシソ科とマメ科だなーと思うように、こっちの荒れ地はたいていがアカバナ科とシソ科だな(セージが多い)と思うのだ。いや、極論してるのであってナス科もキク科もケシ科もユリ科も多い……(ナス科やキク科やケシ科やユリ科に抗議された)。ともかくっ。「河原荒草」を書いたときは(あたしの詩集ですよ)荒れ地のアカバナ科たちにホレこんでいたので、最後を、ナツクサちゃん(主人公)をコマツヨイに変身させて終わらせたのだ。なんてことは誰にも読み取れまい。でも、じゃーアカバナ科の何にそんなに惹かれてるのかという点だが、まだ自分でもよく掴めていない。ロゼットなとこか? しぼむとこか? きょう折り取ったマツヨイも、株の下のほうはロゼットだった。

ルイの舌と威嚇

2012年08月28日(火)

きのう朝、下に降りてきたら、ルイがうしろから飛びかかってきた。そんな犬らしいふざけかたをするのは初めてだった。トメとふたりで、公園につれていったときも、なんだかうれしそうに走ってついてきた。少しずつ、慣れてきておる。ときどきニコをうなって追い散らす。ニコはいいだくだくと追い散らされているが、あたしの椅子に座っているとき(ニコの定位置)近くにルイが来ると、ニコがうなって威嚇する。きょう、夕方、ゴハンをやろうとしているとき、ルイの舌が口の中にしまわれているのを見た。驚いた。それから何回も、舌をしまって、ふつうの犬みたいな顔になってるのを見た。うちに来て、よその犬というのをじっくりと観察し、舌が出ていてはおかしいらしいということに、気がついたのかもしれない。

車の中のニコとルイ

2012年08月28日(火)

居間でパピヨンたちと遊んでいると、タケが嫉妬してそばに寄ってきて撫でてもらいたがる。そしてルイを追いかけまわして、世が世であればあんたなんか血をみてるのよといわんばかりににらみつける(娘たちいわく「モロの顔」、「もののけ姫」のモロがする憎悪をこめた威嚇の顔だ)。きょうは友人を迎えに空港まで、ニコとルイを連れて行った。MINIで行った。あたしのRAV4は右肘のところに肘をおく物入れがある。ニコの定位置だ。MINIにはそれがないので、ニコはいつも助手席にすわる。しかし今日はルイがとっととすわってしまった。というか堂々とねそべってしまった。で、どいてよ、そこ僕の席だよ、みたいなことはニコはいわないのだ。そのかわりにその前の足もとにすわって、じっとあたしをみつめておった。そしてにじりにじりとハンドブレーキの上にからだを寄せて、顔をハンドブレーキの下につっこんでみたり、ハンドブレーキの上にすわってみたり、とうとうあたしの膝の上にのってきた。これはだめ、と押しとどめるとまた助手席の足もとからやり直した。そのうち、助手席にルイと並んですわってみた。でもきゅうくつなのでやっぱり降りて、助手席の足元からやり直して、またにじりにじりと。空港について、ルイを後部座席に移して(ルイは何もいわないでおとなしく移された)友人が助手席に座ったとたんにニコは膝の上に飛び移り、そのまま家までそこにいた。

マツヨイグサ

2012年08月27日(月)

某所の植物事情の連載で、今月はマツヨイグサについて書こうとしているがなかなか、なかなか、かけなくてもんもんとしておる。マツヨイグサの仲間はたいていこのへんの出だ。あの太宰も好きな大きいやつはオオマツヨイ、このへんで見るやつは、湿地マツヨイという名前がついている。たぶんオオマツヨイよりはちょっと小さめで、でもああいういわゆるマツヨイグサっぽい、つまり直立して花は黄色で大きくてしぼむと少し赤っぽくなる植物だ。湿地という名前ももっともで、潟地のへりに咲いている。というか夏のはじめにはもっと咲いていたが、今は少し残っているだけ。マツヨイグサの仲間は、春になると荒れ地にはいっぱい出る。いろんなのが出る。たいていは這っている。コマツヨイとなづけたが、同姓同名が日本にもいるようだ。で、荒れ地にはマゴマツヨイもいれば、ヒマゴマツヨイもいる。アレチマツヨイもいる。こないだ見に行ったら、アレチマツヨイがぱらぱらと残っている程度だった。でも調べてみたら、どれも、カミソニアという属名で、アカバナ科はアカバナ科なのだが、こないだまでマツヨイグサの属に入っていたが、諸般の事情で独立したそうだ。植物にくわしい熊本のご近所のEさんが、このごろマツヨイグサは熊本ではあんまりみかけないといっていた。じっさいそれが現実らしい。ヒルザキツキミソウはあるといっていた。でもあれは逃げ出して殖えるということはあんまりない。強くないからだ。去年、うちの(カリフォルニア)庭にも植えてみたが、すぐ枯れてしまった。

クリスちゃん

2012年08月24日(金)

見たけどわかんなかったので、うちに帰ってきてwikiで復習し、ネットのネタバレの「結末は?」みたいな質問サイトにもいって丹念にしらべた結果、よーくわかった。つれあいは、あんまりわからなすぎて、クリスちゃんの悪口を言うのを忘れておった。クリスちゃんはあいかわらずマゾヒスティックないい男であった。三島のやってたセバスチャン(CAMKの篠山紀信展で見た)をクリスちゃんにこそやらせたい。インセプションではファラミアにちょっと似ていたトム・ハーディはたくましいを通り越して太りすぎの巨漢になっていて、レクター博士みたいになってるし、ぜんぜんイメージがちがった。久しぶりの映画館の映画であった。さー仕事仕事。

三人称のsについて

2012年08月23日(木)

あしたはThe Dark Knight Risesを見にいく。つれあいに、来なくてもいい、といったのについてくるそうだ。またなんだかんだとねちねちとクリスちゃんの悪口をいうにちがいない。しかし、邦題が、少なくとも、ダークナイト・ライズとかになってなくてほっとした。ライジングも、のだめみたいだし、sit とshitの違いをほーふつとさせるし、不満はあれこれと残る。まー、いい、カリフォルニアなので見にいくのはRisesのほうだ。悩まずに見られる。さーーーひさしぶりのクリスちゃん、どうしてるかな♡

ルイと任務完了

2012年08月16日(木)

ルイが、起きてるかぎり、誰のあとをも、どこにでも、ついてくるので、S子が、しみじみと「ルイ、もう任務完了したんだよ、楽にしていいんだよ」と言い聞かせておった。しみじみのそのことばをくり返してみて、じわーーーっとまた泣けてきた。

ニコとルイとおしっこと荒れ地

2012年08月11日(土)

もちろんおもな理由は時差ボケだが、ルイが寝るようにと寝室においた犬ベッド(新品、ルイ用)にだれかがおしっこをひっかけて、それが臭くてたまらないので目がさえた。家じゅうが臭い立っておる。ルイがマーキングしているんだろうとは思うが、どさくさに紛れてニコもマーキングしてるような気がしてならない。その上、タケがデッキでばしゃばしゃおしっこをしまくるから、デッキへのドアをあけるともうたちまち、ものすごい臭気が襲いかかってくる。これは今度ブラシを買ってきて洗い流そうと心に決めた。昔はいろんなところでおしっこしていたのだが、ここ数ヵ月デッキに集中しているからこのように臭うのだと思う。
今、娘たちがいないので、きのうの朝夕の散歩はたいへんだった。まずタケにハーネス装着して、つり下げて外に出て、ほんのそこまで歩かせる。階段の少ない庭から入って、ベッドにすわらせて牛乳をやる。それからパピヨンたちを連れ出す。熊本では伸び縮みするリードを愛用していたが、2匹いるとそんなもの使っていられないのだった。角の教会までの道、荒れ地、荒れ地から芝生への道、いろいろと連れ出した。荒れ地で、ニコに棒を投げて取ってこさせていると、ニコはうれしがってきゃんきゃんわめきながら砂だらけになって走りまわるのだが、ルイはぼーっと見ているだけだ。投げてやっても知らん顔をしておる。ベンチにすわると、ニコが乗ってくる。撫でてやる。ルイを抱え上げてやる。撫でてやる。またニコを撫でてやる。またルイを撫でてやる。

ルイのてんかん

2012年08月10日(金)

ルイとニコを会わせてみたら、ほとんど同じ大きさだった。たんにルイが肥満していただけだ。ルイのほうが頭がまるくて大きいだけだ。ニコは小顔で、耳が特別大きいのだった。Tださんにあずけてあった2か月半で、ルイの肥満もずいぶん解消された。8キロ半から6キロ半になった。あたしらの2キロとは意味がちがう、たいへんな減量である。うらやましい。ひんぱんにおこしていたてんかんも起こさなくなった。D先生はストレスが原因のひとつといった。父との生活の何がストレスだったのかよくわからない。父との生活があまりに閉塞的でストレスを感じていたのか、あるいは父の与える人間の食べ物が身体的にストレスだったのか。父の死んだ後、あたしの家に連れて来て暮らしていたとき発作を起こした。長い間けいれんしていた。もうカノコもいなかったから、死んで一週間くらい経ってからだ。それから一日か二日で、Tださんに長期ホテル住まいになった。あれが最後だ。不思議である。

ルイの旅

2012年08月10日(金)

ルイをこっちに連れてくる用意は万端ととのえていた。Tだ動物病院のD先生とは打ち合わせをかさね、書類を用意し、安定剤ももらい、ケージを購入し、水飲みもつけ……、で、当日、あまりに時間がなく、あまりにあわてて、ケージを忘れて熊本空港のジャパレンの返却場に着いたのである。焦った焦った焦った焦った、熊本空港の搭乗時間はせまっていた。それに乗らなきゃ次のじゃ国際線に間に合わないかもしれないと思った。で、ANAに電話して国内線はケージが借りられると聞き出し、M子に電話してケージ買って羽田に来てくれと頼み、そのまま熊本空港にいった。ジャパレンさんがいつもとはちがう至近距離まで連れて行ってくれた上に荷物も運んでくれた。で、懸案の離着陸にのませる安定剤は……これも忘れてきた。それで正気のままルイは離着陸だ。羽田についてM子の持ってきてくれたケージに入れ、検疫にいくと、検疫の獣医さんはとっても優しかった。それからANAのカウンターでチェックインだ。ルイは芝生でちょろっとおしっこはしたが、水は飲まなかった。チェックインしたあと、緑色の網で、ケージがくるぐるまきにされた。まるで獲物のようであった。検査場に飼い主同伴で行って、OKを出してもらって、そして別れた。再会したのはLAの手荷物受取場だ。安定剤で眠らせなかったので、ルイはしゃっきりしていた。検疫はなにこれ?というほど簡単だった。日本の検疫でもらった書類を1枚みせただけだ。検疫の人たちは、犬より犬フードの持ち込みに目を光らせているようであった。で、S子とトメが迎えにきており、芝生でおしっこをさせて水を飲ませて一時間半かかって家に辿りついて、タケはベッドの上で、半分寝たきりだが、上半身はちゃんとおこしており、周囲で起きることにはちゃんと反応しており、自分の意見もちゃんと持っており、あたしが帰ってきたことについては喜びを表現していたが(動けないので目でいっておった)新参者についてはしばらく気がついてないようであった。ニコは例によって全身をくねらせながら飛び出してきたが、ルイに出会って、ぱっと凍りつき、ルイのおしりを嗅いでまわった。しかしそれだけだ。威嚇も牽制も何もなかった。あたしの椅子にのっているとき(そこがニコの定位置)にルイも乗せたらううと唸った。それだけだ。だからそれは、それ以降しないようにした。ルイはまったく不用心に、そしてとても無神経に、あちこち嗅ぎまわった。タケの至近距離でうろうろするのでこっちはひやひやした。タケはなかなか気がつかないようだが、ついにあたしの部屋にすわっているときに、目の前をうろうろされて気がついたようだ。それから何回かルイにたいして歯を剥いて、威嚇し、また吠えかかって噛みつこうとした。これでニコは何回もやられて血を出したが、さいわい、今はからだがきかないので、かみつきたくても届かないのであった。

夏のまとめ

2012年08月10日(金)

めまぐるしい3週間だった。今はカリフォルニア。あの熱さから逃れてはきたもののここもかなり暑く、しかも蒸し暑く、日本ほどではないにしても、ぺたぺたと空気がひっつくほどで、きょうは散歩にいって汗だくになって帰ってきた。来週まで、この暑さはつづくようだ。まー、盛夏だからしかたがないし、こういう変化がなければほんとに常春になってしまって、頭の芯がくさってくる。大船渡でY浦先生に会った。すばらしかった。Y浦先生の声に、存在に、クラクラした。大船渡でいろんな人々に会った。すばらしかった。東京で何回も話をし、朗読した。K恵先生の箏とはじめてやることができた。M上さんもいっしょだった。すごいものだ、音は。ことばの限界を感じたが、それが可能性ともいえるのだろう。ユマニテの朗読は今いちであった。いつもの調子が出なかったのは疲れていたせいもある。反省している。文学教室は「ご見物の気」というのか、観客ががやすやすと反応してくれた。八重洲ブックセンターはY浦先生と朗読したあとでちょっとY浦節が入った。で、それをやるのがおもしろかった。大船渡の光景はすさまじかった。これを前にしたら、こないだ朝日で書いた自分の詩なんか、ちょろすぎると思った。でもそれが現実なんだろう。

   
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