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伊藤製作所「豆畑支所」
   
 

阿部岩夫さん

2009年06月29日(月)

阿部岩夫さんが亡くなった。H田から連絡が入った。6月12日だったそうだ。18のときに東中野の新日文の暗い部屋で、出会った。いろんなことを教えてもらった。詩をかくこと。詩を人に見せること。酒をのむこと。詩人になること。そしてこの道にひきずりこまれた。詩を書いて、阿部さんに持って行くとほめてくれた。それでまた書いた。阿部さんに向けて書いた。阿部さんがいなかったら、あたしはこの「業」をみつけていなかった。もう何年も何年も会っていない。阿部さんに紹介してもらったS郎康さんにも、もう何年も何年も会っていない。I崎さんにも会っていない。阿部さん、ありがとうございました。なつかしいです。

タケとスタートレック

2009年06月26日(金)

夕方、タケを迎えに行ったら、まだ終わってなくて、奥のほうですすり声が聞こえていた。ときどき吠え声も聞こえたがそれはタケではなかった。すすり声のひーひー声がタケであった。しばらく待っていたら飛び跳ねながら出てきて、かすれた、声にならない声で、喜びを表現していた。おしりは大判のあぶらげ大に剃られてあった。え? いくらって? おしりの手当と耳の手当と、ジステンパーかなんかのワクチンと薬で、300ドルちょいであった。もっと高いだろうと思ってたので、そんなにショックではない。でもだいぶよくなっていて、もう、おしりのかいかい跡をかんだりしない。食欲も旺盛で散歩欲も旺盛である。
半年くらい前に、タケの弟のアトスが安楽死した。心臓に腫瘍ができて、苦渋の決断というやつであった。どうやって獣医に連れて行ったか、その飼い主がくわしく話してくれた。しかしタケのこの医者嫌いのようすを見ていると、どんなに苦渋でも、とうていそれは決断できないなあと考えたのである。
タケが短期入院しているすきに、「スタートレック」みにいった。むかしのテレビ、たぶん「宇宙大作戦」というやつは、なんにも覚えてなくてただスポックだけ覚えているので、今回もスポックをみにいったようなものだ。つれあいも見たいといってついてきた。彼はおとなになってから見た上にSF好きなので、もっと思い入れがあるようだ。トメはなんにもしらないで見ていたが、スポック役の人がテレビのドラマで人気なんだそうだ。友だちもファンで、こないだみんな見に行ったそうだ(トメは日本人学校で、いけなかった)。今どきのアメリカの女の子はああいうのが好きなのかとおどろいたのである。
見たあと、つれあいが、あんな大がかりな宇宙船の、あんな大切な任務を、あんなに若い未経験な人々にまかせるのはいかがなものか、と感想をいいはじめたので「リアリスティックな映画じゃないんだから」となだめつつも、70や80の経験だけはたっぷりある年寄りがしのごのいいながら動かしていく宇宙船の話など見たくもないわいと思ったのであった。
チェコフ役の子が、たーーいへんかわいく、ちょーきょーれつなロシアなまりもかわいかったが、納得できないのは、まさにそのなまりである。というのも、チェコフは17という設定で、それだけ若ければ、異言語を使う環境に入れば、もっと早くその言語の発音にはなじむはずだからだ。30や40で異言語使いはじめるのとはわけがちがう。……とかいってたら、「まみー、リアリスティックな映画じゃないんだから」とトメにいわれたのであった。

タケと獣医

2009年06月25日(木)

タケを獣医につれていったが、タケはとっても獣医がきらいなので、入ったとたんに帰る気まんまんで、かすれ声で訴え、ドアの前にへばりついて、大好きなボールもそっちのけであった。けっきょくアレルギーがひどくなったらしいということで、ここ数日大変ひどかった耳だれとおしりのただれをいっしょに治療してもらうことになり、数時間かかるというのでおいてきたが、いやがって、抵抗して、あたしらにひっついてくるのであった。つらかった。ポーランドの幼稚園で「かあちゃーん、おうちかえる」と泣かれたが、ああいう感じ。日本の保育園においてかえったときも、「まみー、まみー」と泣かれたが、ああいう感じ。

タケのおしり

2009年06月24日(水)

観音経偈を訳してきょうも一日が経ってしまった。トメを合気道へ送っていって車から犬たちをだし、はっと気がついたらタケのおしりがなまなましく肉が露出しておる。血もにじみ出て、毛はなめとられてちぎれてかたまってぶらさがっておる。そういえば車の中で、ぺろぺろなめていたので、やめなさいと叱ったところであった。タケはストレスがたまると、手をかんだり、かゆいところをかんだり、なめたりして、ときどき問題があったが、こんなにひどくなったのは初めてで、仰天して獣医に電話したが、もう今日はおわりだといわれ、あとはペットショップへいって天草四郎の仰々しいのみたいな首まわりの防護カラーを買ってくるしかないといわれ、さっそく買ってきて装着。S子に電話したら、お湯でふいてやってくれといわれ、とっても気持ちがわるかったがなんとか拭いてやった。べろべろしていた。あしたの朝、獣医の予約はとった。この頃タケはストレスに負けていなかったのでどうしてこんなにひどくなったかわからない。こないだ安売りしていたからかってきたかんづめにアレルギーおこしたのかもしれない。耳の中もいつもよりただれている(これは持病)。防護カラーは5分でとれてしまった。

夏休み

2009年06月23日(火)

トメが夏休みなのでなーーーんとなく忙しい。そういえば夏休みはいつもこうだった。自分が自分じゃなくなる感じ。で、なんだかんだと連れ出して、買い物したり映画みたりしている。Sageでケーキ食べたりもしている。遊んでるように見えるが、自分のために遊んでいるのではなく、遊ばせているのである。連れて行った映画は「おくりびと」、日本の観客たちよりこっちのほうが、年寄りが多くて、元気によく笑った。そして泣いた。トメもわらった。泣いたかどうかはわからない。「スタートレック」もみたいけど、日本に帰ってから字幕つきのでみることにする。三省堂で漫画の1ドルセールやってて、「センゴク」が2冊あったのですかさず購入、7巻と10巻買ってきてどうするんだとS子には叱られたが、前に1巻だけ買ってみたし、ときどき読んでたのであたしにはわかるのである。顔がみんな同じの上(そういう意味ではヤンマガ連載だけど、少年漫画のような体裁である)、「へうげもの」でインプットした武将たちの顔とちがうのでまごついたが、たいへんおもしろかった。夜は『有頂天ホテル」の英語字幕つきのを借りてきて、つれあいとトメとみた。やっぱ西田敏行がかっこよかった。

日本人学校

2009年06月21日(日)

きのうは日本人学校であった。手作りのプチプチ講演会みたいなもんで、たいへん楽しいのである。講演会の用意はしていかないが、ここではきちんと時間をかけて、レジュメ、というか、子どもらに渡すテキストを作っていくので、講演会よりまともかもしれない。相手は高校生なので、五年生用の漢字ドリルを土台に、高校生ならふつう知ってるぜというようなことを取り入れて、例文を作り直していくのである。子どもらがイイ。それぞれに楽しそうにやってくれるからほんとやりがいがある。編集者の顔はとりあえずココにいると見えないし。なんてことをいってないで、さー、仕事仕事。
つれあいのうっとうしさは峠をこした。多少うっとうしいことがあっても、ま、てきとうに、身をかわしていられる。とりあえず。つれあいは、もうすぐどこかに講演に行くので、その用意に忙しいから、こっちにつっかかってくる余裕がない。
ゆうべ、家じゅうの植物がよみがえって緑の葉を繁らせている夢をみた。

卒園式

2009年06月19日(金)

MックスとEリオットの卒業式。幼稚園の。花を持っていった。Dといっしょに子どもらの成長にうるうるした。それからMみさんと会う前に少し時間があったので、つい、Anthropologyでシャツとか夏用の上に羽織るものとか。つい。ここ好き。というかS子といっしょによく行く。こういうの、なんとかというとyahooの辞書でみつけた。親子で同じ服屋で買い物して、母は若返り、娘は経済的に得をする、というのである。で、あたしもよくここで買って、似合わなかったやつはS子に払い下げたりしている。で、とにかく、二三枚買って、Mみさんに会い、いろんなことについて謀議した。

イチローとタケ

2009年06月18日(木)

仕事ぜんぜんできてない。トメ、夏休み。N田さんたち、きのうはパドレス戦のイチローをみにいった。ヒットは出なかったようだ。父に、N田さんたちがイチローみにいくんだよといったら、えっ、イチローと電話のむこうでわくわくしているので、あたしは行かないけど、といったら、「なんで行かない、イチローはみられるときにみとかなきゃだめだ」と怒られた。たしかに。
きのうN田さんたちが帰るとき、車で出ようとしたら、タケが門のところにたたずんで、ほんとうに悲しそうな顔をして見送っていた。あんな悲しそうな、感情のこもった犬の表情は、見たことがない。犬は感情をひきずることがない。でも忘れることもないような気がする。たとえば三年後にN田さんたちが来たとしても、タケはきっとそれを思い出すだろう。砂漠につれていってもらって楽しかったこと。散歩になんどもつれていってもらって楽しかったこと。なでてもらったこと。自分はこの人たちが、初対面なのにとっても好きになったこと……。またぜひ来てもらいたい。タケのためにはぜひ再会させてあげたい人たちである。もちろん人間も楽しかったことこの上もなし。居ながらにして好信楽、和製ローストビーフもたこ土佐酢もおいしゅうございました。

必死

2009年06月17日(水)

あちこちに不義理しまくりでほんとうに心苦しい。

忙しい

2009年06月11日(木)

N田さんたちが来た。出会い頭にタケに袋いっぱいの肉トリートをやってくれたので、タケはなついたのなんの、N田さんたちを追いかけまわしている。N田さんたちがいないと、散歩にもいきたがらない。やっと連れ出して帰ってくると、まずN田さんたちの部屋にいこうとする。こないだ「ひろみ」というのも「けんじ」に負けず劣らず異字が多いことを発見した。ショックである。とりあえず比呂実(ウツクシイではなく、ミノル)というのを削除したが、めんどくさくなってやめた。

けだるさも究まりにけり春の暮れ

2009年06月10日(水)

なんにもできない二週間であった。と何をここで総括しているかというと、あしたN田さん夫妻が来るからだ。やはりそれは、お客がいたらいろいろと忙しくて仕事にならないだろうと思い、すべて10日までに終わらす予定で生きていたが、よのなか思うよにいがねもんだ、帰ってきて以来、まったくなんにもできてないので、結果としてすべてN田さんたちの存在をきっかけに取りかかってしかも終わらす方向に変えたのである。

けんじ

2009年06月09日(火)

ATOK2008の単語の削除のしかたが前のATOKとちがうので、削除できなくてずいぶんむかついていたが、ついにわかった。それでまず「ゆうじん」で最初にでてきた天皇の孫の名前を削除し、「せいしん」で最初に出てきた「西神」を削除した。そんなものを最初に出すなんて、とんでもない辞書である。つぎに「けんじ」から、おびただしいけんじくんたちを削除した。賢治(これは絶対)と研二(世代的なものであろうか、どうもこの名前が慕わしい)と賢二(お世話になってるM沢さんだ)と健司(旧友のT田さんだ)くらいあればコトは足りる。ケンヂは出ないし。けんじくんたちにかかずらわるあまりに、検事や献じがなかなかでないのはゆゆしきことである。しかしひとつひとつ削除しなくちゃいけないのでひまがなくて(心の余裕もぜんぜんない)ぜんぶ削除しきれてない。これを読んでいるあたしの知り合いで、上記以外のけんじさん、いらっしゃいましたらご一報を。削除しないでおきます。

つまらん日々である

2009年06月08日(月)

べつに書くことない。……なんて愛想のないことはいってないで、なんか書こう。ひるまは例によってConvoyにいく日だったので、BookOffで漫画(ぜんぶ1ドルSaleの「はるか17」を10冊……とくべつよくできた漫画とは思えないんだけど、雑誌で読み慣れているから、つい)と「地球の歩き方」のロシア編とモンゴル編と、岩波文庫の「アメリカ名詩選」というの(こういうのを英語でスラスラ読めりゃいいんだがなあ……)。
夜、ごはん食べてからEカフェにいって、PくんとMくんの演奏を聴いた。二人ともトメの同級生でトメのなかよし。ちょーかわいい男の子たちなので、こういうのとトメがなかよしでいてくれて、笑いがとまらない。二人とも背が高くて、トメとハグしてるとこなんか、大木にセミがとまってるようである。Eカフェでは、土曜日の夜に、だれでも演奏できるのだ。PとMコンビは、もうこれで四回目だといっていた。トメはシャイなのでこういうところでやりたがらない。あたしの娘だもん……。
古いコンピュータに入っていたものを取り出したくて、電源いれるが立ち上がらなくて、電源切ってはまたいれて、を何十回もくりかえした。でも立ち上がらない。いや、たいしたものじゃないんだけど。近所の映画館で「おくりびと」やってる。

コンピュータと空港

2009年06月06日(土)

ついに古いコンピュータが立ち上がらなくなった。今までほんとによくしてくれた。と思いつつ机の上から取りおろし、とりあえず部屋のすみに片付けた。人間関係もこういうふうに壊れて片付けていければいいんだが。今朝は五時半におきてS子とS子の師匠のCを空港に送りとどけた。二人はミシガンでひらかれる合気道の国際大会に行くのである。このごろ国内線は荷物を預けると一個めに15ドル、二個目は25ドルかかるので、二人は、なんとか武具をひとつにまとめ、あとは機内持ち込みにしようと必死であった。二泊三日の旅に稽古着を二着(かれらはそれをギと呼ぶ)、木刀を数本に木杖を数本もっていったから荷物はぱんぱんであった。二人を落っことしたあと一人で疾駆して帰ってきたが、この気分なので、ふと意識がうつろになると、むかむかむかついていてののしりことばを吐いているのに気づいてうんざりした。きょうはRAV4でいったので、車にipodをきく装置はついてないのである。音楽もなしで、何もさえぎるものも慰撫するものもなく、危険であった。

いっとくが「うつ」ではない

2009年06月05日(金)

きのうは「弁護士のくず」の1巻、4巻5巻をかいに、わざわざブックオフへいき、それからSageへよってケーキとカプチーノで30分ばかり漫画読んで帰った。はじめてだ、用もないのにひとりで喫茶店にいって時間つぶすなんて。そんなことでもしなけりゃやってられねーよという心境である。バナナムースたべようと思ってたが、ショコラオランジュが一個だけのこってたのを見て、またついそれに。こないだ買ったYarisは、ipodつなげると大音響で音楽が聴ける装置がついていて、行き帰りにそれを鳴らしていた。うちについたらまだグレングールド演奏リスト編曲ベト5番が鳴ってたので終わるまで車の中でききながら、5巻を読んで泣いていたのだった。こんな漫画でどうしてこんなに泣けるんだというほど泣ける。まず登場人物がよく泣く。顔をかくして泣く。涙を流して泣く。それを見て、マミ先生という若い女の弁護士もいつももらい泣きする。ここがツボなんではないかと思った。そしてまたネームがきちんとツボを押さえるようにできている。「うけいれられた」「みとめられた」瞬間に、人は押さえていた感情をゆるめて泣くのだ。そういう意味では「テレプシコーラ」と対極にある。ネームが、あーそれだけはいうなよというツボだらけ。どっちもリサーチさんざんやって考えぬいてるネームなのだろうが。マジで、漫画でも読んでなきゃ生きていられないくらい現実が厳しい。そういうわけで仕事がぜんぜんはかどってない。なんにもおわってないし、取りかかってもいない。よく生きてると思う、こんなていたらくで。

漫画

2009年06月01日(月)

Convoyへ買い物(じつはトメのクラリネットのレッスン……そこは日本食屋が何軒もある地域)にいったついでに、あちこちに道場のポスターを貼ってまわり、BookOffで漫画を大量に買い込んで、ついでに日本食も少々買ったのである。トメをピックアップしてSageへよってショコラオランジュとカプチーノ。トメはいつものチョコレートケーキ。ショコラオランジュは、オレンジのムースにラズベリーが入って、酸味が強く、快く刺激してくる。ムースのなめらかさと土台のスポンジに入ったクルミのごつごつが、酸味とスポンジの上にかさねたミルクチョコの甘味が、実にいいバランス。
買った漫画はほんとに漫画だ文句あるかというような漫画ばかり、一冊一ドルの漫画を十二冊。雑誌で読んでておもしろかったけど、最初のほうは読んでないやつとか、いちど読んでみたかったのとか、おもしろかった漫画家のほかの作品をちょっとためしに一冊とか。買いたかった「黄昏流星群」は一冊しかなかった。ほかに「Master Keaton」、冬目景、オノ・ナツメ、「はるか17」、「あんどーなつ」、藤田和日郎、「黒鷺死体配達便」……あと忘れた。いちばん読みでがあったのが、「弁護士のくず」。もっと読みたい。1ドルSaleのとこはきょう実に豊漁で、際限なく買ってしまいそうであわてて出てきた。しかし岩波文庫には買いたいものがなかった(買いたいものは買いつくしてしまったのだ)。きのうつれあいがまたねちねちとトメに文句をいいはじめ、しかたがないから同席して、トメに意見をいわせたりつれあいのことばを好意的に翻訳したりしていてすごく疲れた。きょうはその反動でトメにまつわりつかれている感じ。

   
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