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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

かんぴょう巻き

2010年11月18日(木)

 ツイッターで皆さんにかんぴょう巻きを食べますか? とお尋ねしてみた。

 大阪へ行くようになって、東京と違うなあと感じたことは幾つもあるけれども、お寿司屋さんもそのひとつ。もっとも、東京の寿司屋は特別な感じがして、そっちのほうが珍しいのかもしれなと思わないでもない。岡本かの子が「鮨」で描いているすし屋は東京のすし屋だ。御常連さんが、大将から秘密の旨いものを御常連さんたちに出すようなすし屋だ。あまりたくさんの量を食べられなくなった大人が、贅沢と気ままとわがままをいう店。それが東京のすし屋。慣れない客にはちょっと気難しいところもあるのが東京のすし屋。それを岡本かの子は「鮨」でうまく描いている。

 大阪はすし屋さんはもっとざっくばらんで、飲み屋に近い。飲み屋に、〆のお茶漬けや焼きおにぎりがあるような感じで、おすしも握っていますというところ。鯖の押し寿司や太巻きがあるのも、大阪のすし屋さんの特徴。太巻きの中には干瓢の煮たのも入っているところもある。なのになぜか、かんぴょうを細く巻いた巻き寿司がない。そこで、ツイッターで皆さんに「かんぴょうの巻き寿司を食べますか」とお尋ねしてみたのです。

 東京、神奈川、茨城と首都圏、関東一帯では、かんぴょうの巻き寿司はあくありふれた当たり前の食べ物。もちろん栃木でも。栃木はかんぴょうの大産地。それから北海道と新潟からも「食べます」というお返事をいただきました。運動会と遠足にはかんぴょうのお寿司が決まりというのは、私が子どもの頃と同じでした。子どもには、かんぴょうの海苔巻きと玉子を持たせておけば良いという雰囲気もあって、それで、私は思春期の頃、かんぴょうの海苔巻きが嫌いになった。ご飯に甘い煮物が入っているなんて嫌だなと、あまり、かんぴょうの海苔巻きに手を出さなくなったのだけど、あれはひょっとしたら反抗期の現れだったのか? 海苔巻きと言えば、かんぴょうと胡瓜の入ったかっぱ巻きが定番。かっぱ巻きのほうは決して嫌いになることはなかった。

 信州、尾張、三河、岐阜、富山と、かんぴょうの海苔巻きは良く食べますよとお返事をもらった。あまり食べませんねというのは長崎、それから愛媛。食べたということは思い出に繋がっているけれども、食べないということは「思い出しもしないし」「考えてもみない」ということになるので「食べません」というお返事は貴重でした。はやり西のほうではそれほどかんぴょうの海苔巻きは食べない様子。それでも鹿児島では食べましたというお返事もありました。

 かんぴょう巻きにわさびを入れてもらって、ちょいちょいとつまむというオツな食べ方を教えてくださったのは戸矢学さん。戸矢さん、御元気そうでなによりです。思春期にご飯の中に甘い煮物を入れるなんて、とかんぴょうを敬遠した私も、どうやら、またかんぴょうの巻き寿司に回帰。大阪では珍しいと知ると、なにやら貴重に思えてきて、東京のかんぴょうの巻き寿司がおいしくなりました。今度、お寿司屋さんで「わさびを入れて巻いて」と頼んでみます。

 御協力いただきました皆様どうもありがとうございました。

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