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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

装丁。造本。製本。

2010年11月16日(火)

 本の装丁の仕事をしている人から、紙や栞、のどぎれなどの資材の種類がしだいに少なくなっているという話を聞きます。また、印刷の歴史は良く調べられていて、その関係の本もたくさんあるのですが、造本の歴史となると、あまり本がありません。そうこうしているうちに、造本でなくって、製本で調べたところ、東京製本組合の組合史の本があることがわかりました。「造本」じゃなくって「製本」。実際に製本をしている人の立場から見れば「製本」です。

 詩人の平出隆さんから、最近のお仕事の案内をいただきました。本を作っている。つまり造本です。詩人が本を作ると言えば、詩集を出すことをまず考えますが、「最近の仕事」「造本」という言葉で平出さんはご自分の仕事を説明しています。装丁家と詩人で「本」を「造る」ということをすごく意識しているのでしょう。

 作品の出来上がりはいったい「何時なのか」ということを時々考えます。小説の場合は「最後の行を書き終えた時」とか、あるいは丁寧な人になると「完」の文字を書き終えた時ということで、一応の完成となるでしょう。でも、それはあくまで一応の完成に過ぎず、どんな場所に作品を発表するのか、どんな形の物に仕上げるのかということが、そのあとに残っています。私の場合は自分の作品はやはり「本」にしたいと思います。電子メディアではなくって、電子ブックではなくって、紙の本にしたいのです。紙の本にする時、もちろん印刷も重要な要素です。デザインも重要な要素です。が、もっとも重要なのは、それが本という形態になること、つまり製本されることなのではないでしょうか?そう思うと造本と言う言葉はおもしろい言葉です。

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