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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

鴨川から見る太平洋

2004年12月28日(火)

 房総の鴨川に行って来ました。花屋さんが話していたとおり、鴨川の水仙はもう花盛りを過ぎていて、ここ数日の寒さでいささか咲き疲れた様子さえ見えました。

 天気予報では大晦日は大荒れのお天気になると言っていますが、昨日はたいへん穏やかな日でした。海もよく凪いでいて、冬の太平洋とは思えない穏やかさでした。
同じ海でもインド洋では大津波が発生しているなんて信じられない眺めでした。

 今年はほんとうに災害の多い年でした。台風が多かったのは日本ばかりではなく、アメリカもたびたび巨大ハリケーンに襲われていました。12月に入ってからこの「豆の葉」もなにか楽しいことを書きたいと思いつつも、目に付くのはドンキ・ホーテの放火だったり陰惨な誘拐事件が未解決のままだったりと、愉快な話題が見つかりにくいのに困ってしまいました。

 中学生の時、小松左京の「日本沈没」なんて小説を一生懸命読みすぎた後遺症でしょうか?穏やかな鴨川の海を見ていても、ついつい、余計な想像をしてしまいます。今日になってぽつぽつ東南アジアにいる知り合いから無事だという情報が入って来ています。

お腹にフォークとナイフを刺した七面鳥

2004年12月26日(日)

 「マッチ売りの少女」。野坂昭如の短編小説ではなくて、ほんとうの「マッチ売りの少女」のほうですが、私はこのお話の絵本を何冊か持っていました。一番、印象が強いの祖母の家の納戸の中から見つけた本です。

 小学館の本で、子どもの本なのに、ちゃんと大人の本のような体裁を持っていて、本そのものの厚みもありました。この本の中にお腹にフォークとナイフを刺した七面鳥の絵がありました。七面鳥はフォークとナイフを刺したまま、よたよたとこちらに向かって歩いてくるのです。クリスマスになると必ずこの七面鳥の夢を見ます。高校生くらいまでは恐ろしかったのですが、それ以上になると、サンタクロースを同じくらいにお馴染みの存在になってしまいました。

 お腹にフォークとナイフをさした七面鳥が出てこないと寂しいくらいです。今年は出てこないなあと思っていたら昨夜でました。ちょっと焼けすぎのようなやつが。

 納戸に入っていた小学館の本はもともと叔母の持ち物だったみたいです。ある日、叔母と話していたら、叔母が「お腹にフォークとナイフを刺した七面鳥の丸焼きの絵があって、あれが怖かったの」と言ったので、同じ本だと解ったのです。叔母がずっと七面鳥の夢を見ているかどうかは解りません。

詰め物をした鳥

2004年12月24日(金)

 どうも老眼らしいと気付いたのは今年の秋口でした。昔から眼鏡がかけたくてしかたがなかったので、いよいよ念願がかなうようです。子どもの時、母の眼鏡をいたずらでかけたら「そんなに急いでかけなくても、今に絶対、眼鏡なしではいられなくなるんだから」と言われました。
 
 なんで眼鏡の話から始めたかと言えば、眼鏡とくれば次は「孫」。眼鏡と孫がそろえば立派なおばあさん。これもなりたかったもののひとつ。おばあさんになりたい。やっぱり言われました。「そんなに急いでおばあさんにならなくても、そのうちちゃんとおばあさんになれるよ」そうかな?なるべく体力のあるうちに、例えば孫と水泳ができたりするうちにおばあさんになりたいのですが、しかし無闇に「孫」を作られるのも考えものだし、これは眼鏡より難しい。

 で、眼鏡をかけたおばあさんと、クリスマスにお腹に詰め物をした七面鳥を食べたい。これこそ、私がこの世に生まれて初めて望んだ願いでした。ああ、ずいぶん時間がたってしまったけれども、どうやら一歩ずつ、その願いに近づいているようです。孫の立場とおばあさんの立場が違っちゃっているなんてことはどうでもよろしい。「マッチ売りの少女」の絵本を読んで以来、この念願がかなう時をずっと待っていました。

 お腹に詰め物をした七面鳥ですが、これが長い間、憧れの食べ物であり、同時に謎の食べ物でした。なにしろ日本で売ってくる七面鳥も鶏もお腹は空っぽでなにも入っていません。なまじの鶏の丸焼きよりも鶏のモモ肉のから揚げのほうがずっとおいしいということになっていました。外国の小説を読むと、鶏の丸焼きはごちそうなのに、なぜ日本だと小骨が多くて高価なばかりのつまらない食べ物になってしまうのか?謎をとく鍵はお腹の詰め物が「つまらない」ところにありそうです。で、昨年、ちゃんと詰め物をした鶏を発見しました。お米や栗が鶏のお腹に詰まっています。これが旨い。鶏で蒸し焼きにした穀物これこそごちそうの本体なのです。

 今日はそ詰め物をした鶏を売っている唯一の日。

うさトラと楽うさ

2004年12月22日(水)

 伊藤比呂美さんに「うさぎとトランペット」のすてきな書評を書いていただきました。来月の新潮社「波」に掲載されます。で、その書評のなかで、「うさぎとトランペット」を略して「うさトラ」と書いていますが、これは前々から我が家では「うさぎとトランペット」の略として使われていました。伊藤さんは「楽隊のうさぎ」も短縮して「楽うさ」にしてしましました。

 これからは「楽うさ」と「うさトラ」と呼ぶことにします。なんとなくいい感じ。

 その「うさトラ」ですが、昨日あたりから本屋さんに並んでいることろもあるそうです。堀込和利さんからお知らせいただきました。トピックスのほうに「うさトラ」の無口な女の子、宇佐子のことを書きたいと思っています。

100件目 お引越しました。

2004年12月21日(火)

 これで100件目のコラムになります。ちょうど100件目でお引越しになりました。これからもどうぞよろしくお願いします。

 これまでスタッフルームに集まられた皆さんは新しいスタッフルームへの入り方を管理人のながしろばんりさんに問い合わせて下さい。それほどむずかしくありません。また、スタッフルームでおしゃべりを楽しみたい方はキーをお渡ししますのでメールを下さい。

 祝!!!お引越し。新しいおうちは気持ちがいい。

お引越しです。

2004年12月20日(月)

 慣れ親しんだこのホームページももうすぐお引越しです。今、管理人のながしろばんりさんが一生懸命マニュアルを読んでいます。

 正式バージョンをアップしますと言ってからずいぶん長い道のりでした。夏の間にアップするつもりだったので、表紙の写真は夏服です。ちょっと細木数子風で、なんだか自分でも怖いのですが。

 というわけで、ここに雑記を書くのもあと少しの間です。来年は勘九郎も勘三郎になっちゃうし、なんとか今年のうちに我がホームページにお引越しも完了したいものです。えっ、勘九郎がどう関係あるのかって?あさって、勘九郎最後の舞台を歌舞伎座に見に行きます。渡辺えり子の演出の「桃太郎」が楽しみです。

街ががらんとしているので

2004年12月17日(金)

 目が覚めるとどあんどあんと風の音がしていました。冷たい北風のようです。

 街を歩いていると、暮れだというのにがらんと寂しい感じがします。あんまりがらんとした感じがするので、アルバイトをしている学生に聞いてみました。まず、スーパーでアルバイトをしている学生は「ぜんぜん、売れません、今年は赤字です。でもこしひかりは売れるんです」と言っていました。キャバレーでボーイをしている学生は「売り上げは去年の同時期の四割です。このまま行くと冬が越せずに、春になったら店が潰れて、僕は失業しちゃいますよ」とぼやいていました。

 台風、水害、地震、異常気象、こういうものが人の気持ちに与える影響は通常の経済指標には入ってきません。が、スーパーへキャバレーの売り上げには響いてくるものです。今年のクリスマスデコレーションは「青」が流行なのだそうですが、その「青」も溌剌とした色というよりもなんだか寒々しい印象をより倍加させているように見えます。きっと多くの人はおうちでおいしいお米でもごはんに炊いて静かにこの災難の多かった年が終わるのを待っているのでしょう。

爪のきり方

2004年12月15日(水)

 館山に住んでいたころ、ピアノを習っていました。ピアノの先生は苗字から類推するに、むかしの水軍いや海賊の末裔ではないかというお家の人でした。

 広いお屋敷で、敷地の中に5軒も家が建っていました。お屋敷の周囲には竹やぶとやぶ椿の林がありました。春はピアノのレッスンに行くたびに、竹やぶの筍がどのくらい背が伸びたかを確かめに行くのが楽しみでした。今頃の季節はやぶ椿の木に登って、蜂と一緒に花の蜜を吸うのが楽しみです。あるとき、椿の花のなかに蜂が入っていて、ちくりと刺されてしまいました。驚いたついでに、木から転げ落ちたのを、お手伝いさんが見ていて、助けてくれました。

 このピアノの先生はレッスンの途中でぱっと手を掴まれて「こんなに爪が伸びていたらピアノは弾けません」と言われました。以来、私の爪の切り方は極端なくらいに短く切るようになりました。もっとも、手を掴まれてから、数ヵ月後のレッスンでは「指から血が出るほど短く切らなくてもいいのに」とも言われたのですが、なぜか、最初のぱっと手を掴まれた瞬間の印象のほうが深いのです。

 今でも爪は短く切っていますが、マニュキュアを塗ると、あんまり爪が短すぎて、笑っちゃいそうな感じになっています。

ドンキホーテの火事

2004年12月14日(火)

 昨夜、さいたま市のドンキホーテで火事がありました。2件立て続けの火事です。どうやら放火らしいのですが。

 まだドンキホーテがそれほど支店を広げていないうちに渋谷の東急デパートの前にあるドンキ・ホーテへ知人の案内で行ったことがありました。その時、これは火事があったらこわいねと話たのを覚えています。雑然を積まれた品物の中には高級品も混じっていて宝探しのような感覚で人気が出ているのだと教えてもらいました。

 そのせいか、昨夜の火事のニュースを聞いてすぐにあの雑然とした売り場に悪意を持つ人間もいるのだなと思いました。

 今日はまた、昨年の12月18日に千葉県館山市であった放火事件の求刑公判が開かれたというニュースもありました。事件がおきた現場からすぐのところに空家になった私の実家がありました。放火事件は春先から頻発していて、これをきっかけに家を手放すことになりました。今日の求刑公判では、一家四人の死者を出した事件も含めて「死刑」の求刑があったそうです。

いろんな人から聞いた話

2004年12月13日(月)

 淡路島のタクシーの運転手さんに聞いた話
 
 地震に備えておくものって何かありますか?
「一週間分の生活費を現金で。カードが使えるとかクレジットがあるって言っても電気がこなくちゃどうもならないからね?

 テレビなんかで地震の時、家族はどうしたこうした、娘がどこにいったなんてやっているけど、あれはうそ。地震が来たら自分のことだけでせいっぱいや。
 人間、生まれるときも一人なら、死んでいくときも一人って気になります」
 きっとそうなんでしょう。生まれるときも一人死ぬときもひとりなら、生きている間くらいは誰かのほかの人の心配をしてもいいなあという気もしますけど。

 小料理屋のご主人に最近聞いた話
「今年はなんでも、みんな急いでいます。いや、人間じゃなくて、魚とか野菜が。ぶりなってもう終わりかなっていうくらいに入荷も少ないし、味のほうもなんだか春先みたいにあぶらが落ちています。さんまもねえ、早くにたくさん出てきて、これはうまかったけど、10月もなかばになると市場でも姿を見なくなりました。へんなのは熊だけじゃないみたいです」

 駅からうちに帰る途中の坂道の花屋さん
「水仙はこのあたりに入ってくるのは房総のやつと三浦のが少しです。お正月に出回るのはたいてい房総のやつ。それから福井あたりから出てきます。今年は房総のが11月の末にはじゃんじゃん出回り始めて、こんな調子だとお正月には品薄になりそうです。路地物だから、花の咲く時期を調整できないんです。もうなくなっちゃうじゃあないかしら」

 海の中でも山でも畑でも地面の下でもいろんなことが起きているらしいです。

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