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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

フルハウスの朗読会

2018年08月23日(木)

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 朗読会で朗読をする佐伯一麦さんは1本前の電車で到着していた。黒いTシャツの丸襟にちょこんとアマガエルのピンブローチをつけていた。あれ?って思ったら「これ中沢さんにもらったんだよ」って。ああ、それ奥様に差し上げました。思い出した。まさかTシャツの襟に止めてくるなんて(笑)
 柳美里さんが開いた本屋さん「フルハウス」はもとは水道屋さんのおうちだったそうで、立派なお蔵が母屋の後ろにあった。このあたりは新しい家でもお蔵を作っている家もけっこうあるみたい。大きなお家が多いですねと言ったら、地元の人が「これ普通サイズです」と。
 お蔵の後ろが元は作業場だったようだけど、朗読会などはその作業場を会場にしている。柳美里さんのおうちのお隣は石の家。お蔵と同じ石を使っていた。房総の鋸山の房州石よりずっと色が白い。栃木の大谷石よりキメが細かい。どこか近くに石の産地があるのかもしれない。
 佐伯一麦さんが自作朗読で読んだのは「空にみずうみ」。7月に中公文庫に入ったばかりの本。震災後に読売新聞に連載された小説。雨音と水琴窟の音に耳を澄ますくだりから、最後にまた水琴窟が出てくるところを佐伯さんが読んだ。周囲の自然な音が聞こえてくることと、日常生活の豊かさに目が向く。その関係の話を佐伯さんがしてから、柳美里さんが作品の中に出てくる「スモール・トーク」の話をした。スモール・トークは「雑談」という意味。作中で染色教室に通ってくる耳の不自由な受講生が染色の要旨だけではなく、みんなの無駄話も知りたいというくだりがある。
 スモール・トークの魅力について。それから、柳美里さんの本屋さんのためにいろんな人からおすすめの本を推薦してもらったけど、絶版になっている本も多く、改めて本の推薦を頼むこともあるという話になった。
 「暑い」と私も扇子をぱたぱたやっていたけど、エアコンなしでも自然な風が通すので、「暑い」のをおもしろがることができる程度の暑さ。休憩時間に裏へ出てみたら、向かいのおうちの庭で青い柿の実がたくさんなっていた。これが色づく頃はこのあたりは冬景色の気配かしら。

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