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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

疫病と財政出動

2020年04月07日(火)

ベーシックインカムという考え方を知らなかったら住民一律に当座必要な現金支給という発想をなかなか受け入れきれなかったかもしれない。
 実際、香港の林鄭月娥長官が感染症対策として住民全員一律に14万円支給と聞いた時は違和感があった。「えっ」と思った。それが2月26日。人気取りのばらまき?と。
 その後、欧州の各国の対応を見ていると、背景に新自由主義に対抗するベーシックインカムの考えがあることがだんだんと理解できてきた。疫病に対する防疫対策で停止してしまう経済の流れを少しでも支えようという社会的必要性も呑み込めてきた。
 だから、現金支給は救民対策でもなければ、景気刺激策でもないと、その段階で理解した。お金の流れが止まれば、経済の仕組みに支えられた社会基盤制度が崩壊する。電気、ガス、水道を運営する会社が破たんしたら、市民生活は即座に困窮する。食料品、日用品の物流が止まれば、市民生活は成り立たない。
 ベーシックインカムと言えば新しい考え方だが、社会システムの防衛として経済のフローを守るという見方をすれば、政策の古典的な基本に近い。例えて言えば、飢饉の時に米蔵をあけて(経済のストック)お粥をたき誰にでも分け隔てなく振る舞う(経済のフロー)という古典的な政策と一致している。
 私のまだらっこしい考えの展開を書いてみた。
 自粛と賠償はセットというスローガンが出てきたのは3月初旬から中旬。これは分かりやすいスローガン。共産党が「財政出動は防疫のための費用」という態度を打ち出したのもその頃だったかな。これもあまり面倒な説明を必要としない分かりやすさ。
 財政出動の意味を明確に言葉で把握すれば、おのずと、どのような財政出動がもっとも効果的かが理解されてくる。困っている人を助けるための救民対策でも景気を刺激する景気対策でもない。疫病から社会を守るための生きたお金の使い方としての一律現金給付策が浮かび上がってくる。現金一律給付は救民対策ではないと書いたが、救民対策をしなくてもいいと言ったわけではない。経済のフローを守れば、その日暮らしの人々の生活は結果として守られる。救民対策ではないから所得制限などの煩瑣な手続きの必要もない。景気刺激策ではないと書いた。景気(活発な経済活動)を呼び込むのは、経済の基盤が守られていることが前提。経済のストックはフローによって守られているわけで、フロー(お金の流れ)が止まってしまえば景気刺激もなにもあったもんじゃないという話。

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