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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

映画「ゆうやけ子どもクラブ」で井出洋子監督とアフタートークしました。

2020年02月06日(木)

良い映画を見せてもらいました。小学校から高校まで放課後の障碍児対象のディサービスを記録したドキュメンタリー映画です。いろんなことを思い出させる(想起)映画でした。
 自分が子どもの頃。自分の子どもたちが小さかった時のこと。ただいま保育園の入園競争真っ盛りの孫たちのこと。
 それから障害を持っていたおともだちのこと。私が小学に入った時、家の向かいに発育障害と知的障害を持った女の子がいました。カコちゃんと呼んでいました。「カコちゃんはほんとうはもう6年生なんだけど、今年1年生に入ったのだから親切にしなくちゃだめよ」と言われました。1966年、当時は障碍児学級が小学校の中に普通学級とは別に作られていました。うちの子どもたちの時は、障害を持った子も一緒に勉強するようになっていました。思い出す子どもたちのおともだちの顏があります。現在は遠くの施設に入って暮らしているというおともだちもいました。

 障碍児のための放課後ディサービスが小平市で始まったのは1978年だそうです。私が大学へ入った年なので、今から40年前の東京の景色や雰囲気はありありと目に浮かべることができます。

 映画に記録された「ゆうやけ子どもクラブ」の様子は、人がどうやって自分の世界と出会ったかを丁寧にカメラへ納めているものでした。積み木を積んでいるばかりのヒカリ君。積み木で電車の線路を作るのが大好きです。電車の線路はしだいにリアルになって行きます。駅や跨線橋なども積み木で作られるようになります。で、列車に動物たちが乗るようになりと、この変化の時間は実にゆっくりを進んでいます。やがて駅で電車を待つ人が現れ、そのあと、ヒカリ君自身がおすもうをしているおともだちの土俵を横切るようになるのです。自分が住む世界と時間をかけて出会ってゆく様子がカメラにおさめられ、編集されています。私もあんなふうに世界と出会ってきたんだと微笑しました。実は私は子どもの頃、積み木とを組み合わせて街を作る遊びが大好きでした。

 学校は「読み書き」を教えなければならないので、どうしても時間を「目的で縛る必要」があります。今は国語の時間、次は算数の時間というように「目的で縛られた時間」の中で過ごすこといなり、目的で縛られない時間の中で「私はここにいる」と自分の周囲の世界との自由な関係は持てませんが、「ゆうやけ子どもクラブ」では世界との自由な関係が持てる場所になっています。それが「障害を持った子どもに寄り添う」ということになるのでしょう。そして、私は「自分もずっと昔、子どもだった頃、目的に縛られない時間の中でゆっくりと世界に溶け込んで遊びほうけていた」のを映像を見ながら思い出していたのです。人生の最後にそういう時間の再現があったらいいなあという願望もちょっぴりそこに混入していました。

 障碍児のための放課後ディサービスがあることはこの映画で初めて知りました。この40年間の経験の蓄積は、社会的な財産、公共の財産でしょう。保育園、学童保育など、昭和後期から平成にかけて、社会的サービスの経験が積み重ねられてきたひとつだと思います。利潤追求にはなじまないとされてきた様々な社会的サービスが、現在は「民営化」という名称で「企業化」されようとしています。企業は「利潤追求」をいう目的に絞り込んだ運営をします。こうした流れについても映画は考えさせるものを持っていました。


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