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角からの視点 1 空騒ぎの‘韓流’
2012年08月08日(水)21時10分
 最近世界中が韓流ブームで真っ盛りだ。毎日のように一種の「ライブニュース」から聞こえてくる、全世界の若者達の歓呼の声、「サランヘヨ!」と書かれた韓国語のメッセージカード攻勢もまた爽やかだ。その代表的な実例を一つだけ挙げると以下の通りだ。昨年10月末までソウルを始め、東京、上海、パリ、ロサンゼルス、ニューヨークを飛び回った「K-POP」(SMエンターテインメント所属のアイドル歌手が総出動 のワ―ルドツア- )でコンサート会場は人で溢れるくらい大人気だったという。アメリカポップ文化のメッカであるニューヨークメディソンスクエアガーデンを5、6時間も揺るがしたこのような盛り上がりの原因を敢えて考えてみるとしたら、曲そのもの以上に派手な服装、サーカスさながらの手に汗握る動き、天井と壁を行き来するパフォーマンス、グローバルマーケティングを狙う事務所の野望と企画力、出世欲で満ち溢れる若手歌手の訓練などのお陰であるだろう。

 ところで、こういう「韓流ブーム」を創り出した元祖の国が日本であることは公知の事実だ。近代初期、英文の翻訳をする中で「歴史・自然・個人・権利・自由」のような漢字の新造語を創り上げた国が日本であり、その実力から「韓流」と言う珍しい言葉まで誕生させたことは納得のいくところだ。それでは「韓流」を見抜いた日本人の予見をどのように解釈すればいいのか。彼らは大衆文化の感動を直ちに感じ取る天賦の瞬発力のような感覚でも潜めているのだろうか。

 とにかく哀切な純愛物としてTVドラマ<冬のソナタ>が日本人一般の優れた大衆文化への鑑識眼をぱっと開かせたのは明らかだ。しかし残念ながら韓国文化全般、さらに韓半島固有の伝統文化に対する日本人の関心がどんどん高まっているという話は聞こえてこない。故にこのような傾向が続いたら、日本人の大衆文化偏食症は益々増えて、果して韓国にも伝統・思想・文学などがあるかというような幼稚な質問を突き付けられる日が遠くないかも知れない。如何なる場合にも偏食は良くないし、それが文化を享受する場合は特にそうである。従って韓国からの一方的な大衆文化輸出は両国の真の意味での交流と理解には微々たる役目しか果たせないだろう 。

 幸い韓国の日本文化学習熱は、たとえJ-POPの実力は分からないとはいえ、旺盛であり多彩だ。

 文学だけに限って考えてみても、日本の女性作家群の興味津々な翻訳版「官能小説」は様々な階層の人々から広く読まれているだけでなく、現代日本小説の古典である有島武郎の 《或る女》と谷崎潤一郎の《細雪》(この本はもう再び新しい翻訳本が出た)まで翻訳されているわけだから。

呉市のタウン誌「くれえばん」掲載 翻訳 カク・ミギョン

   
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